2004/09/13 (月)

ブラック・アルマジロ X PRIZE賞金レースから潔い撤退

ANSARI X PRIZEに挑戦していた有力チームの一つ、アルマジロ・エアロスペースプロジェクトチームのブラックアルマジロが今年のX PRIZEレース優勝争いから撤退すると発表した。

「現時点では、バート・ルータンのスペースシップワンに勝てるチームはどこにもない。」とチームリーダーのジョン・カーマック氏は潔くスペースシップワンの有利を認め、今回のレースの優勝争いからは撤退することを宣言した。

テキサス州でアルマジロチームを率いるカーマック氏はパソコンネットワークシューティングゲームの草分け「DOOM」を作ったゲーム界のパイオニアであり、次は宇宙というまったく異なる分野でパイオニアになるべく奮闘していた。

しかし、アルマジロチームはいくつかの大きな問題にぶちあたっていた。



同チームの宇宙船「ブラック・アルマジロ」は過酸化水素水を燃料とするロケットで音速を超えた速度で数十キロの高度に到達する実験を行った。この燃料となる過酸化水素を高密度で作り出すことに1年の歳月を費やした。しかし、8月初めのテスト飛行で残念ながらテスト飛行は墜落に終わった。
また、アメリカの航空協会FAAから打ち上げの認可をとることができず、遠くニューメキシコ州のホワイトサンズ試験場でのテスト飛行をかろうじて認められただけであった。
「たとえ打ち上げ場が遠くとも我々が飛行可能な宇宙船の開発が間に合っていれば、打ち上げに必要な150万ドルを工面して必ず飛行をしていた。しかし、宇宙船の開発は間に合わなかったのだ。」
カーマック氏は残念そうに語っていると言う。
ブラック・アルマジロはロケットエンジンで高度100kmに到達し、パラシュートで帰還するように設計されている。
また、帰還時の二重故障に備えて、ロケットの先に衝撃を吸収するクッション材を起用し、安全性を高める設計となっている。

X PRIZEの賞金レースからは潔い脱退を表明したが、アルマジロ・エアロスペースは次に開催が予定されている「X PRIZE CUP」レースやその先の本格的な「宇宙旅行事業」の実現に向けて引き続き開発を続けることを表明している。

ブラック・アルマジロの次の挑戦を期待し、これまでの勇敢な挑戦に拍手をもって今回の潔い撤退を賞賛したい。

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