2005/01/24 (月)

スペースX社のロケットエンジン「マーリン」実験成功

米スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)社で開発中の軌道用ロケットエンジン『マーリン』が14日(米国時間)、約160秒間の燃焼実験に成功した。

このロケットエンジンはケロシン(灯油)と液体酸素を用いたシステムで、その推力約33トンあり、650kg以上の荷物を地球の周回軌道に乗せることができる。

スペースX社は33歳のITビジネス富豪 イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が打ち立てた宇宙ベンチャー企業である。
彼の目標は、このマーリンを『ファルコンI』に搭載し、「地球周回軌道」へ送り出すことだ。

現在、X PRIZEの成功によって、準軌道からの宇宙旅行開発と事業が脚光を浴びている。
X PRIZEで優勝したスペースシップワンは、マイクロソフトの創設者の一人、ポールアレン氏が出資し、ベンチャーの元祖とも言えるリチャードブランソン氏がヴァージンギャラクテック社で事業を開始する予定だ。
また、ネット通販会社アマゾンの創設者ジェフ・ベゾス氏もブルーオリジン計画で準軌道からの宇宙旅行サービスをターゲットに開発が進められている。

これらは夢の軌道到達へを最終目標としながら、その第一段階として弾道からの開発と事業の成功を狙っている。
これに対して、スペースX社 ファルコンで勝負しているイーロンマスク氏は、軌道到達こそ、真の宇宙旅行であるとして、準軌道の段階を通さず、すぐに軌道到達を目的とした宇宙船の開発を行っている。
よって、現段階において「民間軌道宇宙旅行」の実現に近い位置にいる1つがスペースX社である。

ファルコン計画の目標は 第一段目にマーリンを5基以上搭載し、乗客5人を乗せて低軌道の周回へ運ぶファイルコンVの開発であると発表した。
この乗客5人で低軌道到達とは、米ビゲロー・エアロスペース社が軌道宇宙ホテルの建造計画を実現する為に、軌道向け民間宇宙船の開発促進を促す「アメリカズ・スペース・プライズ」の優勝条件と一致する。
これにより、ファルコンVがアメリカズ・スペース・プライズにエントリーすることが確実視される。

米ではこのように、IT事業で成功した勝者たちが、次のベンチャー魂のターゲットとして「民間宇宙事業」にロックオンしている。

日本においても、ITベンチャー企業として有名なライブドアがケロシンと液酸を用いた安価な有人ロケット開発をロシア等の技術を転用して5年後には行いたいと発表している。
このように民間宇宙開発を取り巻く世界の流れが加速を始めている。

宇宙開発を志す者や、新たなビジネスフォロンティアを求める者たちにとって、湧き上がる興奮を隠しきれないほど素晴しい、宝の山の新天地が見えているのだ。
21世紀が面白くなるのはこれからだ。

※写真はスペースX社のHPより

関連サイト
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