2005/06/26 (日)

ルーマニアの準軌道宇宙旅行プロジェクトOrizontの公式発表が間近

ルーマニアValceaに本拠を置くARCA(Aeronautics and Cosmonautics Romanian Association)が、開発を進めるサブオービタル旅客機Orizontの公式プレゼンテーションをまじかに控え、組立てプロセスが最終段階に入ったことを発表した。

ARCAのスポンサーの1つが、この組立てプロセスを終えるために組立て保管施設を提供し、最終組み立てが行われている。
ORIZONT機体の最初のプレゼンテーション発表は、今月Bucharest(ブカレスト)で行われ、現在非公開のデータも多数公開される予定となっている。

ARCAは準軌道飛行レースANSARI X PRIZEにエントリーしていたチームの一つで、東欧では唯一の参加者だった。
ARCAは革新的な航空宇宙プロジェクトを助成する非政府組織で、そのメンバーはもともと高性能ロケットエンジンの開発を一緒に行ってきた人たちだ。チームリーダーのDumitru Popescu氏がARCAのCharman兼TechnicalDirectorである。

このチームが開発を進める宇宙機“Orizont”は、ロケット部分とクルーカプセル部分からなり、Pressure fedの推進システムでケロシン、過酸化水素(85%)を燃料と酸化剤にしている。単段式の垂直離陸/パラシュート着陸の宇宙機で、地上の打ち上げパッドから垂直に打ち上げられ、最高速度1300m/secで高度100kmまで上昇し、ロケットとクルーカプセルを分離。それぞれパラシュート展開で再突入、降下し、50km離れた地上あるいは海上に着陸する。そしてヘリコプターによりそれぞれ回収される。
無重力時時間は2分間、上昇時3.5G、下降時1.5Gの加速がかかり、クルーキャビンは1気圧。そして2週間後には再使用可能となる。
Orizontは、X Prize Cup Competitionの全ての必要条件を満たすことができるように設計されている。

昨年9月には、ルーマニア空軍の打ち上げ場Midia Capeから実験機Demonstrator 2Bを打ち上げ、最高高度1000m、速度630km/hを達成し、飛行実験を成功させている。


もともとルーマニアは、宇宙飛行の父と呼ばれるヘルマン・オーベルト(Hermann Oberth)の生まれ育った国であり、彼のプロジェクトや研究の多くはここで行われた。
オーベルトはコンスタンチン・ツィオルコフスキー(Konstantin Tsiolkovsky)、ロバート・ゴダード(Robert Goddard)と共に宇宙飛行学の基礎を確立し、1935年、ルーマニア初の液体燃料ロケットを発射することに成功した。

(ルーマニアの宇宙開発の歴史はこちらへ)
Romanian cosmonautics and aeronautics history

ルーマニアは古くからドイツやソ連とロケット開発や宇宙開発で協力しており、高度な技術的な蓄積がある。ARCAチームの今後の動向にも、目が離せない。


※写真はARCAのHPより


関連サイト
ARCA